鎌倉山にある棟方板画美術館に入ると、板と柵の字に気づく。
棟方志功は「版画」と書かず「板画」と書く。
板のいのちを彫り起す、という棟方志功の思想がそこにあり、最初の文集「板散華・一九四二年刊」で宣言して以来のことで、一九三六年の宮澤賢治の「なめとこ山の熊版画」では、版を使っている。
版画は、一枚の版木で何枚もの色彩を表現することはできないので、一色一枚ずつ版木を彫り、重ね合せて摺り、多色摺りの版画を作る。
棟方志功は、墨色で摺った白黒板画の裏側から、絵の具を筆で塗る技法を使って独特な板画を作り上げた。
裏彩色といわれる。
絵具が紙の裏側からしみこんでいくことで、描かれたものではない、やさしい表情がそこににじみ出る。
赤や朱の色も柔らかい。
柵とは垣根などの柵のことだが、棟方志功の柵は、四国を巡礼する人々が寺に納める廻札を意味していて、自分の願所に一つ一つ札を納めることで、自己の作品に念願をかける、柵を打つことだとしている。